階段の先が、眩しい。
それは光ではないのだけれど、白くて、穏やかな気持ちにさせてくれた。
辺りが暗い所為でもあるかもしれないのだけれど。
そんな不思議な気持ちでいる自身の前を、銀色の髪を持った少年――アレンが歩いていく。
<カーム・シルバー>
アレンは、俺よりも年下だ。
――けれど、その背中は出会った頃よりもずっと大きく、頼もしく見えて。
何だか、俺の方が今では護られている様な、落ち着かせて貰っている様な、そんな気さえしてくるのだ。
それは、認めたくないけれど本当の事。
今では、俺なんかよりも、ずっと強い。
「………」
コツ、カツ、と静かに階段を踏み締めていく足音。
何を考えているのか分からなくて、何だかもどかしい気持ちにもなって。
「………なぁ、アレン」
「…何ですか? ラビ」
振り返った顔は、やっぱりまだ少年だ。
「アレンはさ〜…この、戦いが終わったらどうするんさ?」
「え? だから、ホームに返ってたくさんご飯を……」
「違う違う」
「? じゃあ何ですか?」
「この……ノアや、伯爵との戦いが終わったら、って事」
「本当の…戦いが終わったら、ですか?」
「ラビ?」
リナリーも、この質問には不思議そうな顔を見せる。
「………いや、特に深い意味はないさ、ただ……アレンは、どうするんかなーって」
「そうですねぇ………」
アレンは、うーんと少し考えてから、そうだな、という表情で答えを口にした。
「……僕は、ホームの皆と……笑い合って…“ありがとう”と言いたいです」
「………そっか」
アレンのその言葉は、俺には考えられない言葉。
だから、余計に眩しく感じたのかもしれない。
「ラビは、どうなんですか?」
「俺?」
アレンの興味本意で言われた一言が、俺には辛い一言。
「そうさなあ………」
この戦いが全て終わったら、俺は「ラビ」の名を捨てる。
もう、こいつらとは縁を切る事にも、なる。
「ラビ?」
「あ………えっと、な」
此処では言えない、だって……
俺の事情は、身勝手な事だから。
けど………
「……ねえ、あれ……ドアじゃないかしら?」
「? あ、本当みたいですね」
「本当っスか!?」
さっきからあまり口数の少なかったチャオジーも、思わず顔を上げて叫ぶ。
「…………」
「…さぁ、行きましょう、ラビ」
「………そう、さね」
「……未来なんて、まだ考える時間はあるんですから。早まらなくたって、きっと見つかりますよ」
そう言って、アレンは励ましてくるかの様に笑う。
「………ああ」
振り返ったアレンの姿は、目の前の明るさと同化して、目を眩ませた。
―――アレンは、まだ知らない。
俺の……ブックマンとしての使命を、運命を。
もしも……俺が、ブックマンでなくて、ただのエクソシストとして、アレン達と共に居たのならば。
その時は……俺は、何と答えたのだろう……?
「早く、ラビ―――!」
「早く来て下さいっス―――!」
「……分かってるさ!」
俺はそう答えて、バンダナを被り直した。
……分かってる。
けれど今はまだ、その時ではないのだから。
まだ………時間は、きっと残されている。
End
水としてはラビが一番好きだったりします……銀魂の沖田繋がりでv
この話はノアの箱舟から、神田、クロウリ―を置いていった後、ティキ&ロードに会う前の話ですww
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